プロバビリティ・スペース

プロバビリティ・スペース (ハヤカワ文庫SF)

  •  ナンシー・クレス
  • 販売元/出版社 早川書房
  • 発売日 2009-01-09

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振り返ってみれば予想以上に面白い三部作だった。
まあ確かに一作目は、自分の期待する方向へとは進まない話だったので、あまり面白くはなかったのだが、しかし、二作目は期待する方向へと進み、そして三作目はというと、これが期待する方向へとはあまり進まなかったのだが、、しかし、一作目、二作目と丁寧に語りそして作られてきた世界と人物とがうまく機能して、相変わらずほとんど何も話が進まないのにそれでも読んでいて楽しいのだ。
謎の人工物の秘密が解き明かされるのかという期待はあまりしてはいなかったのだが、まあそのあたりは期待通り、何も解明されずに終わってしまうのだけれども、二作目で強烈な個性を際だたせていた科学者が誘拐され、そしてその代わりに今度は息子を捜し求めて暗躍する強烈な母親が登場し、物語は相変わらずあわただしいまま進む。
こんな強烈な性格の人物を登場させて果たして物語は無事幕を閉じることが出来るのだろうかと心配したくもなるのだけれども、これが何とかなってしまうのだ。ナンシー・クレスの巧みなキャラクターさばきには感服するしかない。
ゲーム理論に基づいて異星人との微妙な交渉をやってしまったりするあたりはまだしも、一作目であれほど執拗に描いていた<ワールド>の世界は二作目であれほどのことが起こったにもかかわらず、突き放したかのようにあっさりと描かれてお終いだったりと、全編ほとんど全てが皮肉な展開の固まりで、ナンシー・クレスが最後に用意した結末は、これはこれで納得する反面、あまりにも皮肉過ぎて、感動すら覚えてしまった。

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