- 著 ジャン=パトリック マンシェット
- 販売元/出版社 光文社
- 発売日 2009-01-08
よけいな描写など何もなく、ただひたすら殺伐とした展開が続いていく。
胃弱で苦しむ殺し屋、精神病院から退院してすぐに子守として雇われた女。まともな人間などほとんど登場せず、それ故に、何が起こるのか予想もつかない面白さがある。
子守として雇われた女は、子供と共に誘拐され、自殺に見せかけて殺されそうになるところで反撃し、そして逃亡する。しかし、警察に駆け込まずにヒッチハイクをし、そしてその挙げ句、運転手を殺して金品と車を奪ってそのまま逃走するのだ。単に、警察が苦手だからという理由だけでだ。
何を考えているのか説明のないまま登場人物達は行動をし、そして人が死んでいく。
追う方も追う方で、何を考えているのかなど説明なしに追いかけているので、実に不気味だ。もちろん、少しずつではあるけれども、読者には手がかりが与えられる。しかし、なし崩し的に展開していく物語の前に、は無力で、ただ呆然としながら物語を読み進めていくしか方法はないのである。
でもって、最後には、事件の黒幕と真相は明らかとなるのだけれども、居心地の悪い地点に着地させられ、呆然とするのである。
コメント
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