月への梯子

月への梯子 (文春文庫)

  •  樋口 有介
  • 販売元/出版社 文藝春秋
  • 発売日 2008-12-04

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樋口有介は読まないといけないなあと思いつつも、どこか決め手に欠けていていままで読まずにきてしまっていた。
東京創元社で次々と復刊した<柚木草平>シリーズあたりから読み始めていれば良かったのだけれども、なんとなくタイミングが合わなかったのである。
で、今回文庫化されたこの本はというと、樋口有介版『アルジャーノンに花束』ということを耳にしたのでようやくタイミングがあったかなという気がして読むことにしたのである。
主人公は小学生程度の知能しかない40歳の男。母親が残してくれたアパートの管理人として近所の人々やアパートの住人に助けられながらなんとか平穏な日々を送っている。
主人公はある日、アパートの屋根のペンキ塗りをしていたところ、アパートの住人の一人が自室で刺殺されているのを発見する。そしてその時のショックで屋根から落ちて気を失ってしまうのだが、気がついた時、自分の身に異変が起きているのを感じる。
頭がすっきりし、今まで理解するのに困難だったことがすぐにわかるようになったのである。
知能増大の手術を受けた後のチャーリー・ゴードンと同じ状態である。そして知能が人並みになったことで、今までの世界が激変し、親切だった人は実は親切でなかったり、幼なじみの彼女は自分と同じく40代の女性で昔のままではなかったことを知る。
構造的には『アルジャーノンに花束を』とよく似ていてミステリ版『アルジャーノンに花束を』というかチャーリー・ゴードンの事件簿という趣もあるのだが、ある程度は予想できる切ない結末へと向かう。
ミステリとしても確かに解決するのだけれども、とんでもない真相だし、SFとしてもなんだか安易すぎるのだが、読み終えてみると、これはこれで良いのだと思えてしまうところが不思議だ。

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