儚い羊たちの祝宴

著　米澤穂信
販売元／出版社　新潮社
発売日　2008-11

「ラスト一行の衝撃にこだわり拔いた」なんて書かれているので、ついついそんな話を期待してしまったのだが、オビ裏の惹句をよくよく読めば「収録作すべてがラスト一行で落ちる」と書かれているわけで、どんでん返しとは書かれていない。
そそっかしい私は、最後の一行でどんでん返しのある作品集だとばかり思いこんで読み始めてしまったので、釈然としなかった。
しかし、釈然としなかったからといってつまらなかったのかというとそういうわけでもなく、ただ、最初から変な先入観を持たずに読めば、もっと驚いたのだろうなあと思うと、非常にもったいない読み方をしたものだと後悔しているのだ。
まあ、それはともかくとして、ようするに一口に「最後の一撃」といっても多種多様なものがあるわけで、強烈なラストという点でいえば、「玉野五十鈴の誉れ」などは素晴らしく、ラストの一行でパズルにおける最後の一ピースがぴたりとはまる。
ほとんどの話が嫌な話で、これは白米澤に対する黒米澤なのだなと思ったりもしたのだが、よくよく考えてみると、米澤穂信は最初っから黒米澤であって、白米澤だったことなど無いのだ。
短編ということでラストまで一直線、よけいな物がないせいでそのように見えるだけで、いつかは全編真っ黒な長編を読んでみたい気もする。
しかし、アミルスタン羊が登場したときにはちょっと驚いてしまった。