- 訳 クリストファー・プリースト
- 著
- 販売元/出版社 東京創元社
- 発売日 1979-07
『魔法』とか『双生児』とか新しめの作品を読んだ後では、わざわざ読まなくってもいいような話だった。
無論、読む価値がないというわけではなく、この作品の中にプリーストの特徴というか、原点の部分がよく現れているからで、主人公たちの三角関係などはストーカー野郎も含めて『魔法』で語り直されているような話だったし、現実と虚構の境目が曖昧になるなどといった部分はプリーストの独壇場みたいなものだ。
というわけで原点を楽しむという点では満足できるのだけれども、39人の人間が意識を架空の未来へ投射するというアイデア、そして一人だけそこから意識を戻そうとしなかったという設定から想像したくなるようなエンターテインメント的な展開には全くならない。
4分の3くらいまではある意味ひたすら単調で、作者がSFであることを忘れているんじゃないかと思うくらいに普通の小説と化している。
しかしSFであることを思い出したのか、その反動が一気に来るのがその後の展開で、SFとしては非常に面白くなるのだが、あっさりと終わってしまう。
潔いといえばそうなのだけれども、この後、SF的な設定がどんどんと薄れていく理由がよくわかった。
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