- 著 松浦 寿輝
- 販売元/出版社 講談社
- 発売日 2008-10-15
言葉というものは不思議だ。
「あやめ 鰈 ひかがみ」
単純に三つの単語を並べただけなのに何だか怪しげで気味の悪い感じがでてしまう。
もっとも気味が悪いと感じるのは実際にこの本を読んだ後だったせいもあるかもしれないが、しかし読む前からなんとなく得体の知れない雰囲気は感じ取っていた。
「あやめ」「鰈」「ひかがみ」という題名の付けられた三つの短編からなるこの本。
どの話も一夜の出来事であり、それぞれの話が微妙につながりを持っている。っしてどの話も幻想的であいまいな不思議な話である。
「あやめ」では主人公は車にはねられて死んでしまう。しかし何事もなかったかのように立ち上がり街をさ迷い歩くのである。果たして彼は死んでしまっているのであろうか、それとも車になどはねられてはいないのであろうか、はたまた、彼が体験したことは死ぬ間際の一瞬の間の脳内の出来事だったのだろうか。
「鰈」では別の男が主人公なのだが、さらに嫌な話になっていく。電車の中で、そこにはいないはずの人間と出会い、そして彼らは主人公の嫌な側面を見せ付けてはいつの間にか消えていく。
「ひかがみ」でも同じだ。いるはずのない妹にこだわる主人公。何が現実で何が幻想なのか、すべてはあいまいなままに不思議な終わり方をする。
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