- 著 谷崎 潤一郎
- 販売元/出版社 中央公論社
- 発売日 1978-01
さて、柄にもなく谷崎潤一郎を読んでみる。
といっても谷崎潤一郎を読みたくなったというよりも、谷崎潤一郎の『人魚の嘆き 魔術師』の挿絵を水島爾保布が描いていたから読んでみる気になったわけで、どちらかといえば文章の方よりも挿絵の方目当てだったりするので邪道な読書だ。
でもって、水島爾保布のファンなのかといえばそうでもなく、単に水島爾保布が今日泊亜蘭の父親だったからという次第なのだから、まあ変な読み方をするものだと自分でも呆れかえっていたりもする。
文庫にして100ページほどなので読み終えるのにさほど苦労はしないのだけれども、挿絵目当てで読んだにしては思いのほか面白い本だった。
谷崎潤一郎が江戸川乱歩や横溝正史の耽美さの原点ということはさておき、読み終えてみれば確かに江戸川乱歩や横溝正史のあの世界に通ずるものはあるのだけれども、殺人事件が起こるわけではなく、そこはやはり谷崎潤一郎は谷崎潤一郎であってドロドロとしたものが無い。
特に、あやしい魔術師に魅了させられてしまって恋人を捨てて変身してしまった男と、その男と同じ姿にしてくれと懇願する恋人の話である「魔術師」がよかった。
コメント