- 著 野田 昌宏
- 販売元/出版社 東京創元社
- 発売日 2008-11
今年になって「レモン月夜の宇宙船」を三度読む機会がでてくる事になるとは思ってもみなかった。
それというのも野田昌宏が亡くなってしまったわけだからなんだけども、出版芸術社の日本SF全集の刊行が遅れていなかったら四度読む機会があったことを考えると、ある意味凄いよなあ。しかし、他に選ぶ作品が無いのかという気もするんだけれども、一作を選ぶとなるとやはりこれしかないわけで、そもそも題名も素晴らしいし、って題名に関しては美空ひばりの恩恵が多分にあるか。
でもって、早川文庫版『レモン月夜の宇宙船』が未収録短編プラスアルファで復刊するという情報を耳にしたとき、追加される部分はおまけ程度だろうなあと思ったら予想外に追加分のボリュームが多くて驚いた。
まあ、エッセイの方も既読のものが多かったわけだが、しかし、早川文庫版を読んだときと同様、この人はわりと登場人物を酷い目にあわせる人だったというのがよくわかった。とくに「キャプテンたずねて三光年」でのフューチャーメンの面々の対する扱いなんて酷いよなあ。
もっともそれでいて根っからの悪意が感じられないところが、また良いところでもあるんだけどね。
「野田さん小百科」も少し改訂されて収録されているので、早川文庫版から抜け落ちたのは表紙の絵ぐらいなんだが、今回の表紙は早川文庫版を踏襲した絵になっている。
そして、この表紙を見ていると、「SFは絵だねえ」と言い続けていた野田昌宏自身も「絵」になる人だったねえ、としみじみ思うのであった。
やはり、この人は人生そのものがSFだったのだ。
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