- 訳 若島 正
- 著
- 販売元/出版社 新潮社
- 発売日 1989-01
この本が書かれた時期を考えると、この本の中で描かれた世界の先進性という面では確かに凄いのだが、今となってはさすがに歴史的な価値しかないような部分もある。
とはいっても、本格ミステリを真犯人とトリックを知った上で読むのと同じようなものなので、読んでも驚くようなことは何もないといったレベルのことだ。
というわけで、驚くことを求めないのであれば、それなりに面白いのだが、では全然驚かないのかといえばそうでもなく、やはり作者の先進性には目を見張る物がある。特に最後に明らかになる真相などは、今でこそありきたりの真相ではあるけれども、当時、ここまでやってのけたというか、ここまでやられてしまうともう何をやってもこの本の二番煎じではないかと思わせられてしまうのだ。
そういう意味では驚きを禁じ得ない。
さらには、これも一種のシンギュラリティであるともいえるわけで、さすがはヴィンジ、このときからそんなことを考えていたのだなあと驚きのである。
そしてはじけまくった訳者の解説も見物の一つだ。若島正がこんな文章を書いていたなんて、驚きだよ。
しかしこの本での一番の驚きはマーヴィン・ミンスキーの数十頁に及ぶ解説だろうなあ。
コメント
本書は『現代SF1500冊』でサイバーパンクのさきがけとして紹介されていたので、探しているのですけど、全然見つかりません。
大森氏の新潮社時代の編集作みたいですね。結構ほめていたと思っていたのですけど、今『1500冊』をパラッとみてみたら・・・・そうでもなかったか。
でも読んでみたいです!はじけた若島氏ってのも!
記述師さん、こんにちは。
なにぶん、中編といってもいいようなボリュームなので、過剰な期待をしなければ楽しめると思います。
しかし、復刊される可能性もなさそうなので、古書で地道に探すしかないですよねえ。