ルナ・ゲートの彼方

ルナ・ゲートの彼方 (創元推理文庫)

  •  ロバート・A ハインライン
  •  
  • 販売元/出版社 東京創元社
  • 発売日 1989-03

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ロバート・A・ハインラインが亡くなって今年で二十年ということで、東京創元社がひっそりと『ルナ・ゲートの彼方』を復刊した。
ハインラインにどっぷりとはまっていた時期があったとはいえ、はまっていた期間はそれほど長くはなく、いつしか新作が出ても読むこともなくなり、そうハインラインがまだ存命で新作を発表していた時代を僕は経験していたのだ。
そしてある時、ハインラインの訃報を知る事となるのだが、振り返ってみるとまだまだ未読の作品が多かった。1980年代に東京創元社がハインラインのジュブナイルを出していたときに『ラモックス』を読んだのが最後だったのだが、ハインラインといえばジュブナイルだという人も多いというのに、ハインラインのジュブナイルをほとんど読んでいないのがちょっと心残りだった。
そうだよねえ、ハインラインというと『夏への扉』とか『宇宙の戦士』……まあ『宇宙の戦士』はジュブナイルとして出すつもりが出版社に断られたやつなので『宇宙の戦士』はジュブナイルに入れてしまった方が良いか、まあとにかく忘れ去られがちなんだけれどもハインラインは良質のジュブナイルを書き続けていたのである。
で、ハインラインといえば右翼思想とか軍国主義とか脳味噌が筋肉だとかいう意見もある。そういう人にとっては、そんな人間がジュブナイルを書くなんてとんでもないと思うかも知れない。しかし僕にとってのハインラインというのはやはり技術者としてのハインラインなのだ。
遠隔マニュピレーターや、強化外骨格スーツなど、ハインラインの工学的センスは抜群に素晴らしかった。そう、『夏への扉』にしたって僕をしびれさせたのは、タイムトラベルや猫のピートといった部分ではなく、文化女中器を作る前に自動製図器を開発するという、手続きの部分だったのだ。
ロボットを作るのに手作業で製図を書いていたらいつまでたってもロボットの開発に進めない。だからその作業をスピードアップするために自動製図器から開発する。
ジョン・キャンベル・ジュニア譲りの思考だろうけれども、この発想にはしびれるよなあ。
というわけで『ルナ・ゲートの彼方』にも手続きの部分を怠らない、ハインラインの思考がしっかりと存在する。
ハインラインが右翼思想であっても軍国主義であっても何も問題は無い。そんな表層的なレベルではなくもっと土台の部分でハインラインの思考は信頼がおけるのである。
とはいうものの、『ルナ・ゲートの彼方』の結末はちょっとどうかと思うのも確かだ。

コメント

  1. ロバート・A・ハインライン「ルナ・ゲートの彼方」

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     「ひどいよ、ハインライン」という帯の文章についつい惹かれた。どんな鬱展開が待っているんだろうか、とちょっと期待して。
     どうも、自分はハ …

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