- 著 高城 高
- 販売元/出版社 東京創元社
- 発売日 2008-08
『墓標なき墓場』が意外とトリッキーな長編だったので、他の作品もそのような感じの物だろうと勝手に勘違いしてしまい、短編集『凍った太陽』にはとまどってしまったのだけれども、個々の作品を読み終えて高城高がどんな作風なのかを理解し、どういう話を期待すればいいのかわかってしまえば三冊目の『暗い海深い霧』は最初から高城高の世界を堪能できる作品集だった。
なんというか、もの凄く力強い文章というか文体で、素っ気ないのだけれども、ああ、そこがとてつもなくいいのである。無骨で不器用で、まったくもって飾らない文章なのだけれども、その文章でもって描かれる世界の確かさは読んでいてずしりとくるのだ。そして、そんなところで終わるのかと作者に問いつめたくなるようなところで物語は突然ぶつりと途切れ、それ故に鮮やかな印象をもって幕を閉じるのである。全てに納得のいく解決がつかなければ満足出来ないという人には不向きではあるのだけれども、ここまでくると、ミステリとしての驚きがあるかどうかなんてことは些細な問題で、まあとにかく純粋に、高城高の文章に酔いしれたくなる。
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