- 著 高野 史緒
- 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 2008-08
文化的には江戸時代で止まったままで遊郭やら長屋やら元服やらと江戸文化がそのまま残っていながら、ロシアとの戦争に負けてロシアの属国となった日本が舞台。文化が江戸時代でありながらも科学技術は進歩し続けているのでコンピュータは存在し、コンピュータネットワークももちろん存在する。まあ読んでいてそのギャップに目眩がしそうなくらいで、この設定だけでもう充分ですよと言いたくもなる。おまけに時代設定も微妙にというかかなり大胆に食い違いを見せているので、うーむ、なんなんだこの想像力というか妄想力の凄まじさは。
シベリア横断ウルトラクイズやら、やたらめったら広告が出まくるので消し続けないとみることの出来ないネットテレビとか、妄想力だよなあ、これは。
どこまで自覚的なのかはわからないけれども、それでもこの異様な世界は最後まで破綻せず、そして崩れることなく立ちそびえているので、自分の方がおかしいのではないのかとさえ逆に思ってしまうのだ。
しかし、これはSFなのかといわれると、まあ確かにSFなのだけれども、どちらかといえば、この異様な世界の物語はスティーヴ・エリクソンの『黒い時計の旅』を読んだときと同じような感覚であり、この幻視力でもって描かれた世界は癖になりそうだなあ。
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