- 著 今日泊 亜蘭
- 販売元/出版社 朝日ソノラマ
- 発売日 2000
公害による環境汚染で寒冷化が進んだため、迫り来る氷河に追われ、赤道付近に洞窟を掘り、細々と暮らさざるを得なくなった未来。
食料の生産もままならないために人肉が貴重なタンパク質源となり、武装化した集団が人狩りが横行していた。まるでコーマック・マッカーシーの『ロード』のような世界であるが、『ロード』と比べると、今日泊亜蘭の描く世界の人々はきわめて前向きなところが大きく異なる。
過ぎてしまったこと、変化してしまったことにくよくよ悩まないのである。人肉が貴重な食料なのであればそれを食うことにためらいはない。
まあ、だからといって主人公もそんな思想の持ち主というわけではないのだが、ジュブナイルでこんな世界を書いてしまっていいものかという疑問も無いではない。
主人公は誘拐された父親を捜す旅に出るのだけれども、まあそこでこの世界を救う救世主の話が登場し、そして五百人もの予言者が登場したり、べらんめえ口調のアメリカの統領が登場したり、国家といえるほどのレベルではないために大統領ではなく統領となっているらしいところが妙に細かい設定で楽しいのだが、そんなこんなで、最後にどうなるのかと思ったら、マイケル・コーニイの『ハローサマー、グッドバイ』と同じような展開で驚いた。
アメリカではクーデターが起きたままだったりして事態はほとんど解決してはいないのになんとなく明るい未来を予感させて終わらせてしまう強引さというか手際の良さには思わず感心してしまった。
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