- 著 森 青花
- 販売元/出版社 徳間書店
- 発売日 2008-08-06
森青花版『ブラッド・ミュージック』なのではあるのだが、この本が出た当時ならばともかく、今の時点でグレッグ・ベアの『ブラッド・ミュージック』を引き合いに出してもあまり意味がないような気がする。
目下のところ『ブラッド・ミュージック』は絶版中……かと思ったらそうでもなかったのだが、グレッグ・ベアの新作が翻訳されなくなって久しい。まあベアの旬はとうに過ぎ去ってしまって過去の人と化しているのかも知れないが、全盛期のベアの凄さを知っている身としては、なんだかとても悲しい。
で、まあベアのことはさておき、森青花も寡作な人なのか、それとものんびりとしているのか、それとは関係ないだろうけれども『BH85』が文庫化されるまでにかなりの年数が過ぎた。もっともファンタジー大賞受賞作なので文庫化される可能性が極端に低かったのだが、それにしてもよく文庫化してくれたものだと感心するする。しかし徳間デュアル文庫なので、早々に絶版になってしまうのだろうなあ。
当時も、今も、それほど目新しさこそないのだけれども、世界が変容して、そして取り残されてしまった人々の話でありながら、悲壮感など全然なく、むしろあるがままを受け入れてそして、残された側の方も残されっぱなしではなく、逆に全てを取り込んでしまおうとするこの物語は、流行り廃りなどとは無関係に、あるがままに存在するのがいいのかも知れない。というわけで、広く長く読まれてくれるといいなあと思うのだった。
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