- 著 瀬名 秀明
- 販売元/出版社 新潮社
- 発売日 2008-05-28
瀬名秀明という人は、嘘が付けないというか良い意味での誤魔化しをすることが出来ない人なんだなあと思った。
きまじめすぎるのかもしれないけれども、うーむなんだろう、SFが好きなのかもしれないけれども、多分SFを書くよりもミステリの方が向いているんじゃないのかな、今の時点では。
「帝王の死」だとか、なにげないところでエラリー・クイーンに関係する言葉を持ち出してきていたりして、クイーンに対する愛があるのかどうかはわからないけれども、この人の書く本格ミステリを読んでみたくなった。
まあそれはともかくとして、個々のネタは面白いのに全体としてはなんだか論文を読んでいるような感じで、どうも物語を読んでいるという気がしないのが残念。ロボットのケンイチと人間の祐輔とがおなじ「ぼく」を使っているのも、仕掛け上仕方がないとはいえ読み辛い原因の一つだ。
物語の力を信じていながらも物語としてあまり面白くないのが致命的な気がするんだが、だからといってばっさりと切り捨てるわけにもいかないところがやっかいなところ。
なにしろロボットのフレーム問題を一人称で描こうとするなんて、正気の沙汰じゃないよ。あえて難関に挑むところが素晴らしい。
コメント
先ほど読み終わりましたデカルトの密室
瀬名さんはブレイン・ヴァレーの頃から論文読んでるような感覚しましたけどデカルトはブレインよりも論文調が抑え目な印象受けました
個人的には勉強にもなってるので論文調、嫌いではありません
でもTakemanさんの言う通り物語を読んでいるという気がしないのが残念
しかしフレーム問題に限らず過去作品において、その時の本業(最近はロボット工学)への挑戦を小説で書くというのは、これはこれで面白いものが・・・
次の『第九の日』は『デカルトの密室』よりも読みやすくなっているそうなので、まあ、書き続けていけば、うまくなっていく人なのかも知れません。というわけで、いつの日かとんでもない傑作を書いてくれそうな気もしますねえ。