- 著 片理 誠
- 販売元/出版社 徳間書店
- 発売日 2007-05
徳間デュアル文庫が失速してレーベルそのものが消失してしまうのも時間の問題かなと思っていたころにトクマ・ノベルズEdgeが登場したので、ああこれはもう、こちらの方に移るんだなと思ったら徳間デュアル文庫のほうはしぶとく生き残っていて、なおかつトクマ・ノベルズEdgeはファンタジー系が主流っぽいのであまりチェックしないでいたら、取りこぼしてしまっていたのがこの本。
まず、設定が面白い。
人間に敵対する存在として竜がいる。数千年もの寿命をもち、それ故に魔法が使え、そして体の鱗は人間の物理的な攻撃を防御するばかりか魔法に対しても耐性がある。こんな設定の敵では為すすべもないのだが、唯一人間側には屍霊術と呼ばれる魔法を使うことができ、そして屍霊術を用いて屍竜を操り竜と戦っているのだ。そして屍霊術は信仰と密接に関係しているため、とある宗派の者しか使い手がいない。
さらに、死んだ竜なのでその遺体は徐々に腐乱していくうえに、損傷しても直らない。そして屍竜の攻撃力は生きていたときの七割ていどという状態であり、常に二対一の戦法を取る必要がある。そんな感じでかろうじて拮抗を保っている状態ではあるのだが問題はそれだけではない、人間達の方でも宗教的な対立があり、互いにいがみあっていたりする。
主人公は屍霊術の使い手なのだが、法王の命により竜から守るためにとある国へと派遣させられるのだが、その国はかつて自分の祖国を滅ぼした国だった。
というわけで、かなり絶望的な戦いを強いられることとなるわけだが、竜との戦いよりも人間側の政治的な争いや権謀術数のほうが予想外に面白い話だった。
しかし、それ以上に驚いたのは終盤での展開で、おぼろげながらも伏線は確かに張ってあったものの、反則技に近いような唐突かつ衝撃的な事実が明らかにされるのだが、続編ではそのあたりが如何に展開されるのだろうか。
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