- 著
- 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 1977-01
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ジャック・フィニィのミステリというのは不可能犯罪物が多い。『完全脱獄』では刑務所からの脱獄、『クイーン・メリー号襲撃』は文字通り、クイーン・メリー号を襲う話だ。そして『五人対賭博場』はカジノの金庫室にある札束を奪う話である。考えてみるとどの話も映画化されているのだからたいしたものだ、ジャック・フィニィって人は。
しかし、カジノに限らず、銀行の金庫室といった金目の物が腐るほどある場所に侵入して中にある物を奪うという話は小説もそうだが、映画向きな部分もあってそれらと比べるとさすがにこの話は地味だ。もっとも派手な展開をする話だからこそ映画化されるのであって、映画化された作品群と同じレベルでこの本を比較するのは間違いなのだが。あ、でもこの作品も映画化されたから一概には言えないか。
しかし、この話のユニークな点は、難攻不落の金庫室にどうやって忍び込むのかという点だけを問題にしていないところである。さらに大局的な思考をし、カジノのある町までいかにしてたどり着くかという点も問題にしているのだ。つまり、主人公たちがカジノのある町に居たという足跡すら残すべきではないという発想をしているのである。町にいたという証拠がなければ、事件の発覚後に捜査の対象にならないのである。
というわけで、そこまで考えて行動すれば、完全犯罪達成、というか失敗などするはずもないのであるが、これがなかなか一筋縄ではいかない。
ジャック・フィニィが用意した結末がどんな物なのかは読んでのお楽しみといいたいところだけれども、この本、入手困難なところが辛いところ。
だからといって結末をここで書いてしまうなんてことはしないが、ジャック・フィニィらしい結末であるとだけは書いておこう。
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