- 著 アンナ・カヴァン
- 販売元/出版社 バジリコ
- 発売日 2008-06-04
サンリオSF版が出たときに、読まないという選択をした自分のちょっぴりの後悔に対する落とし前をつける意味で読んでみることにしたわけだが、まあ、自分がアンナ・カヴァンを必要としない側の人間だったことがよくわかった。
迫り来る氷と世界の崩壊というイメージの割にはそれほど緊迫感はなくって、いわば糞尿の匂いを全く感じさせない世界であり、汚れの無いCGで作られたかのようなきれいな世界。
最初のうちは、トーベ・ヤンソンの『誠実な詐欺師』が頭によぎっていたんだけれども、世界の冷たさと登場人物の世界の崩壊という部分では似ていたかのように思えたのだが、読み進めていくと両者は全く違うものだった。
無意識的にカヴァンの『氷』に『誠実な詐欺師』のようなものを求めていたせいで、それが違っていたことにがっかりしてしまった部分が大きい。今思うと何で『誠実な詐欺師』のようなものを『氷』に求めようとしていたのか不思議なんだけど。
しかし、この静かで綺麗でそしていびつな世界はたまに読むのであれば悪くはないんだよなあ。
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