酔いどれ探偵

酔いどれ探偵 (新潮文庫)

  •  都筑 道夫
  • 販売元/出版社 新潮社
  • 発売日 1984-01

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都筑道夫という人は多才な人だったが、それ故にか、けっこうとんでもないことをしでかす人でもあった。
彼の翻訳したとある短編などは途中から彼の創作だったりするし、『怪奇小説という題名の怪奇小説』ではジョン・スタインベックの「蛇」がまるごと収録されている。作中作というのは珍しいものではないが、他人の作品が作中作になっているのは珍しい部類だろう。
マリオン・マナリングの『殺人混成曲』という本の翻訳では、十人の訳者を集めそれぞれのパートを翻訳させて、可能な限りの文体模写に努めたりしている。
ポケミス版の『酔いどれ探偵街を行く』では9話目に何気なく自作の贋作を紛れ込ませたりするあたりは、もうやりたい放題である。
まあ、こんなことをされるのはいい迷惑かもしれないけれども、ここまでやることの出来る人はもう現れないだろうと思うと寂しい気もする。
カート・キャノンの『酔いどれ探偵街を行く』の贋作を集めた『酔いどれ探偵』では、契約の問題上、主人公の名前がカート・キャノンではなく、クォート・ギャロンに変更されているのが少し残念だけれども、解説が淡路瑛一になっているあたりは思わずニヤリとしてしまうのだった。
ジュードーの技を使ったり、日本人が登場したり、密室殺人が起きて主人公がディクスン・カーの名前を出したりするあたりが、まあ、楽しんで書いているよなあという気にさせられる。

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