- 著鶴田 謙二
- 販売元/出版社 徳間書店
- 発売日 2008-05-20
<エマノン>シリーズは一通り全て読んでいるのだが、何故か第一話しか印象に残っていない。
第一話以外はつまらなかったのかといえばそうでもないはずなのだが、エマノンといえば第一話が真っ先に思い浮かぶ。まあ第一話を思い浮かべるのが普通だとは思うんだけどね。
しかし、鶴田謙二による『おもいでエマノン』を読んでその理由がよくわかった。
第一話では1967年という具体的な時代、アポロ計画、ハインラインの四度目のヒューゴー賞受賞、ベトナム戦争、帰ってきた酔っぱらいやサージェント・ペパーズといった具体的な現実の出来事が登場するのだ。むろんその時代に何か特別な想い出があったというわけでもない、というか物心さえついていない時代なのだが、想い出を共有するのにはやはり共通の記憶がある方が良い。
あくまで共有できる記憶である。だから、作中の時代にはまだ「さんふらわあ号」は作られておらず、存在しなかったなんてことはあまり問題ではない。そうだよなあ、やっぱりこの物語の舞台は「さんふらわあ号」でなければいけないのだ。
と、書いておきながら一番の理由は失恋の船旅で美少女と出会うというシチュエーションだったりする。そりゃそうだ、こんなシチュエーションは男の子の浪漫以外の何者でもなく、願望充足の物語だ。
それにしてもこのエマノンの刹那の物語が、もの凄く遅筆な漫画家の手によって漫画化されたというのはなんとも不思議というか絶妙の組み合わせだ。
読者にとっては長い時間を待たされたのだが、鶴田謙二にとっては刹那の時間だったのだろう……ってことはないか。
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