- 著 乾 くるみ
- 販売元/出版社 徳間書店
- 発売日 2008-04-04
いつの間にか失速して、とうとう立ち消えしてしまったのかなと思いきや、時々思い出したかのように刊行し続けてきていて、今のところ、隔月でしぶとく出ているところが驚く徳間デュアル文庫なんだけど、『マリオネット症候群』といった一連の薄い文庫が、500円というワンコインで買うことができることを狙ったレーベル内レーベルだということは、この本の解説を読むまで気付かなかった。
まあ、安い価格で良質の物を提供というねらいはわかるけど、かつての祥伝社400円文庫もそうだったけど、大抵失敗しているよなあ。
というわけで、徳間デュアル文庫で出ていた『マリオネット症候群』と新作のカップリングという形で新たに出たこの本だけど、値段が値段だけに既に『マリオネット症候群』を持っている人間にとってもお得感はちょっとある……かといえばちょっと微妙なところだ。
もっとも、乾くるみの小説を読もうとする人間ならばそんなことなど気にはしないだろうからそんな心配などしなくても大丈夫だろう。
で、表題作はといえばこれがなんとまあ暗号ミステリで、よっぽど暗号が好きなんだろうなあこの人は、と思ってしまう。
しかしそれ以上に凄いのは「クラリネット症候群」の実体だ。クラリネットが壊れてしまったせいで主人公に降りかかった災難は……よくもまあこんな事思いつくなあというのと同時に、よくもまあ書ききったものだと感心するやら呆れるやら。そのおかげで読みにくいことこの上ない。でも、真相と結末が意外と爽やかなのはありがたかったよ。
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