- 著 今日泊 亜蘭
- 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 1977-01
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たまに、ひょっとしたらこの人は死なないんじゃないかと思ってしまう人がいる。
山田風太郎がそんな感じだったし、アーサー・C・クラークもそんな感じだった。不謹慎な言い方になるのだが、もうそろそろ死んでしまうんじゃないかというような雰囲気を漂わせておきながら、飄々として生き続けている人たちなのである。
そういう雰囲気を漂わせている人が亡くなった場合、不思議と悲しくはならない。
で、今日泊亜蘭も僕にとってはそんな一人なのである。
それはともかくとして、困ったことにこの人は、なかなか本を書いてくれない。
とくに、三部作の構想をしておきながら二作で止まってしまうのである。
<根岸物語>シリーズも「瀧川鐘音無」と「新版黄鳥墳」で止まったままだし、『光の塔』とその続編『我が月は緑』も三作目の構想があるといっておきながらいつまでたっても続きがでない。
そして『縹渺譚』も、あとがきで三部作を構成すると書いておきながら、三作目を出さないのである。
ある意味、完結させるのを良しとしない性格なのだろうか。しかし、今もおそらく飄々と生き続けていること、そしてこの人は死なないんじゃないかと思えて仕方ないことを考えると、わざと書かないで読者を焦らしているんじゃないのかと思ってしまう。
まあそれはともかく、こういう文章に触れると、ああ日本人として生まれてきてよかったなあと実感するのだ。何よりもこの本には日本語のおもしろさと美しさが詰まっている。
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