燃えつきた水星人

箆棒な人々』では康芳夫の他に石原豪人、川内康範、糸井貫二についても書かれていた。糸井貫二はさすがに接点がないのだが、川内康範はレインボーマン、石原豪人は本の表紙や挿絵などで子供の頃から接点があったりする。
というわけで、『燃えつきた水星人』を読んでみた。
作者は、トーマス・エジソンの秘書もしていたレイ・カミングスである。
女子校のサマー・キャンプ場で生徒たちが誘拐されるという事件が起こり、記者である主人公が調査に乗り出すのだが、どうやら異星人による誘拐らしいことがわかる。そこへ謎のカプセルが地球へ飛来。そのカプセルの差出人は十年前に単独で月へと向かったまま行方不明になっていた青年で、このカプセルには青年による驚くべき警告文が入っていた。
なにしろ月へ向かおうとして失敗し水星まで行ってしまったという発端からはじまり、水星には水星人が住んでいて彼らは背中に羽を持ち空を飛ぶことが出来るのだが男尊女卑の世界で、結婚したら女性は羽を切り取られるという風習、それに対しての不満がとうとう爆発し女性たちの反政府活動の勃発とそれに巻き込まれる青年……という話が詰まっているのである。
全部で170ページほどの分量でありながらこの警告文の内容は70ページにも渡るのだ。章立てされているので、所々、「警告文はまだ続く」などという注釈はいる始末。
水星人による反政府運動が地球に関係あるのかといえばほとんど関係はなく、追放された水星人の悪人が地球の女性を誘拐しにきただけで、なおかつ水星は重力が小さいので地球人よりも力が弱いという、中途半端に正しい設定のおかげで肉弾戦になった時点であっさりと悪は滅ぶ。
おまけに裏表紙の紹介文は主人公と悪人の対決シーンの抜粋で、見事なまでのネタバレ。これを読めば悪人がどういう末路を辿ったのかがわかってしまうのだが、まあ勧善懲悪の物語なのでネタバレというほどでもないよなあ。
今更レイ・カミングスでもあるまいと思うのだが、実際そのとおりだ。表紙の絵を石原豪人が描いていなかったら読まなかっただろう。

中央にいる男が悪人なのだが、まるで江頭2:50だ。
表紙は石原豪人、そして解説は福島正実というもの凄い贅沢な一冊で、これが恐ろしいことに新刊として今でも入手可能なのだ。
ちなみに『水星征服計画』という題名の続編もある。続編はは多少はプロットが複雑になり、派手な戦闘シーンがあったりするのだが、そのせいでかえってまともなSFになりすぎてしまい、前作と比べると今一つ面白くない。

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