司政官 全短編

司政官全短編 (創元SF文庫 ま 1-1)

  •  眉村 卓
  • 販売元/出版社 東京創元社
  • 発売日 2008-01

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『日本SF全集・総解説』を読んだときにそのあまりにも高い未読率に思わず絶望しかけたのだが、こうしてめでたく一冊の本にまとまった『司政官 全短編』を読み終えて、当時読まなくって良かったと思ってしまった。
これはけっして負け惜しみなどではなく、本を読む時間だけは有り余るほどあった時代に読んでもこの本の面白さは分からなかっただろうと、当時の自分の知識や考え方を振り返ってみてそう思うのだ。もっとも、今だったら大丈夫なのかと問われると返答に困ってしまうんだけど。
まあそれはともかく、このシリーズは恐ろしいほど贅沢で密度の濃い作りをしている。
各話それぞれ異なる惑星を舞台とし、奇妙な文化や奇妙な生態系を持つ現住種族がいる。スタニスワフ・レムとまでは行かないけれども、突き詰めればそこまで到達可能なファーストコンタクト物でもあり、ジャック・ヴァンス……というよりもル=グウィンばりの文化人類学的なアプローチがあったり、司政官制度そのものにロボットの存在が組み込まれ、なおかつそれが司政官の補助ではなくそれ以上の役割を担っているためにアシモフのロボットシリーズ的な要素さえも持つ。なので、眉村卓のインサイダーSF論といった小難しい考えを頭に入れながら読まなくっても、土台となる部分で既に面白いのである。
その上で、司政官制度の矛盾と問題といった骨太なテーマがバックボーンとして浮かび上がってくるのだからたまったものじゃない。まったくもって凄すぎるよ眉村卓は。
というわけで、この歳になってから読むことができて本当に良かったと思った。

コメント

  1. 雨読夜話 より:

    『司政官 全短編』

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    著者の代表的なSFシリーズにおける、短編を集めた作品集。
    地球連邦が宇宙の…

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