名誉除隊―星条旗が色褪せて見えた日

名誉除隊

  •  加藤 喬
  • 販売元/出版社 並木書房
  • 発売日 2005-12-15

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福島正実という名前はペンネームなのだが、福島正実はこの名前以外にも複数のペンネームを使っていたことがあってその一つに加藤喬という名前がある。
この本の作者と同じ名前なのだがそれもそのはず、この本の作者は福島正実の長男なのである。
日本SFに良くも悪くも多大な影響を与えた福島正実であるからして私生活においても彼の家族に何らかの影響を与えたと考えるのはたやすい。
もっとも、実際のところ本当に影響を受けていたのかどうだったのかなどというのは知る由もないのだが、アメリカ人にあこがれてアメリカ人になろうとしてアメリカに行き、そして愛国心の表しの手段として軍人にまでなってしまうバイタリティは父親ゆずりなのかもしれないなと思ってしまう。
しかし、第二次世界大戦における442連隊のように、異国人がその国に対する愛国心を示そうとするのであれば、軍隊に入るというのはもっとも簡単でありながらもっとも難しい問題を抱える選択肢だ。
軍人である以上、アメリカのために戦わなければならない。そこでもしその戦う相手が日本だったとしたら、はたしてアメリカの軍人として戦うことが出来るのだろうか。
選択肢は二つ。軍人であることを止めるか、それともアメリカという国の行動を信じて戦うかだ。
だけれどこれは軍隊における異国人という状況だから起こり得る問題だけではない。つまるところ他人に死んでもらうか自分が死ぬかという問題は普段の生活でも起こり得る問題だ。まあ普通はめったに起こらないけれど。
他人が死ぬか自分が死ぬかの場合、どちらを選択するかはそれほど困難ではなくって、よほど特殊な状況でない限り他人に死んでいただくほうを選択する。
では、他人であるAさんと、同じく他人であるBさんのどちらかが死ななければならないとしよう、そしてどちらかを選ばなければならないとしたら、どうすればいいのだろうか。
決断の下せない私は、そのような事態が起こらないことを祈るしかないのである。しかしそんなのんきな結論を出してしまえるのも、平穏な日常生活を送ることが出来る今現在だからであって、ああ自分は温室の中で生きているのだと思ってしまう。

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