二つの月の記憶

二つの月の記憶

  •  岸田 今日子
  • 販売元/出版社 講談社
  • 発売日 2008-01-18

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まったくもって不覚にして迂闊だった。
岸田今日子がこんな話を書くことができただなんて、いやもう自分の視野の狭さと不勉強さを恥じるばかりだ。何しろ僕にとっての岸田今日子ってのはムーミンの中の人であって中の人であって中の人であってそれ以外の何者でもなかったからだ。
つくづく活字の世界ってのは恐ろしく広大で奥深いってことを思い知らされたよ。いや、むしろ岸田今日子の奥深さに驚嘆したってほうが正しいか。
75歳という年齢でありながらも、何故こうも軽やかに飛び跳ねることが出来るのだろうか。
「オートバイ」でのお茶目な真の主人公はともかくとして、ふーん、こういう話を書くんだと思っていたら次の「二つの月の記憶」で愕然。
「K村やすらぎの里」ともなると、エッセイ風の実話的な始まり方をしておきながら、とある女性の、題名から遙かにかけ離れたおぞましい性癖が語られる。
「P夫人の冒険」ともなると、岸田今日子の勢いはもはや止まらず自由奔放、それでいてしっかりとした強かさを見せつける。
ああ、今もどこかできっと岸田今日子は軽やかに飛び跳ねているのだろう、岸田今日子はあまりにも軽やかに飛びすぎてこの世界からさえも飛び出してしまったのだ。

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