ベティアンよ帰れ

ベティアンよ帰れ (ハヤカワ文庫 SF 74)

  •  クリス・ネビル矢野 徹
  • 販売元/出版社 早川書房
  • 発売日 1972-11

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「Bettyann」と「Overture」という二つの短編をあわせて長編化したものなんだけれども、基本は「Bettyann」。
「Overture」が未読なのでどの部分が「Overture」の部分なのかは想像するしかないのだけれども、短編版「Bettyann」を水増ししただけに過ぎない感じもする。
三部構成で第一部はベティアンの幼少の頃とアミオ族の惑星遍歴の物語が交互に語られるのだが、第二部以降はベティアンの物語のみ。アミオ族の物語はイーガンの『ディアスポラ』における主人公の旅を彷彿させる部分もあってSF的には面白いのだが、クリス・ネヴィルはそういったセンス・オブ・ワンダーの方向には振り向いてくれない。
ダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』は長編化しても傑作となり得たのだが、『ベティアンよ帰れ』の場合、長編化したのは失敗だったのではないだろうか。
しかし、アミオ族のパートでは滅び行く種族の孤独感がひたすら描かれ続け、ベティアンのパートではどんな場合でも満たされない孤独感が主人公を苛む。それは今、自分がいる場所ではない、此処では無い場所への渇望であり、この間隔はおそらくSFが好きになった人間であれば一度は感じた事のある感覚ではないだろうかと思う。

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