山口雅也の本格ミステリ・アンソロジー

山口雅也の本格ミステリ・アンソロジー (角川文庫 や 29-3)

  •  ジェイムズ・パウエル/
  • 販売元/出版社 角川書店
  • 発売日 2007-12

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本格ミステリ・アンソロジーと名乗っていながらやりたい放題やってるなあ。
初っぱなが「道化の町」で、いかにも山口雅也らしいセレクトだが、第三部のリドルストーリーは圧巻。フランク・R.ストックトンは続編の「三日月刀の促進士」まで収録してくれているし、クリーヴランド・モフェットの「謎のカード」は作者の解答編のほうではなくエドワード・D・ホックの「謎のカード事件」のほうをセレクトしてあるあたりが心憎い。それにしても、完全に同じ設定とまではいかなかったが、ほぼ同じ設定で「謎のカード」に対する解答を考えてしまったホックにはおもわず脱帽。
全体としてひねくれたミステリが多い中、宮原龍雄の「新納の棺」は本格ミステリらしいミステリで、後説でも書かれているように、メインとなる不可能犯罪トリックよりも、そこにトリックがあるとは思わせない場所に仕掛けられたトリックが素晴らしい。
同様にP・D・ジェイムズの「大叔母さんの蠅取り紙」も意外な真相とそして何ともいえない結末の付け方で、短編でも凄さを見せつけてくれる。
リドルストーリーが圧巻だったけれども、一番の謎は巻末の初出一覧にある「世界最強の仕立屋」だ。当初は収録する予定だったのだがマイクル・クライトンに断られてしまったのかな。

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