- 著 皆川 博子/
- 販売元/出版社 理論社
- 発売日 2007-11
はっきりいって自分の好みではなく、買ってしまったいじょうは読まなくてはもったいないという気持ちのみで読み進めていったわけだが、読み終えてみると凄い物を読まされてしまったという気持ちでいっぱいになってしまった。
ページをめくる手が止まらないとかそういう問題ではなく、嫌々読んでいたうえに、読み終えてみればやっぱり好きな話ではなかったことが実感できて、さらにいえば好きな話ではなかったので全然満足できなかったわけだが、読み終えてみればそんなことなどどうでも良くなってしまう。
皆川博子には脱帽せざるを得ないというのが本音だ。
太平洋戦争の終わりごろ、登場人物たちによって手書きで書かれた一冊の本。その本はそれを書いた少女の手記であり、さらにその中には『倒立する塔の殺人』と題されたミステリが書かれている。
そして作中作である『倒立する塔の殺人』はある事件の存在を浮かび上がらせることとなるのだが、皆川博子の手に掛かるとそれが全く別な物へと変貌させられるのだ。
殺人があり、探偵役もいるし、トリックもある。表層レベルにおいてはどうみてもミステリなのだが、そこで語られているのは何か別なものなのである。
『私の男』を書いた桜庭一樹も凄いと思ったけど、その先にまだまだ凄い作家がいることに不覚ながら気付かせてもらった。
あやうく、一生ついていきますと宣言しそうになってしまったよ。
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