- 著 竹熊 健太郎/
- 販売元/出版社 河出書房新社
- 発売日 2007-12-04
ウルトラマンの世界には怪獣がいて、仮面ライダーの世界には怪人がいる。
怪獣も怪人も、そこにいては困る存在であり、倒されるべき敵として登場するのだが、しかし、彼らがいなければ物語は成立しない。
物語の世界では怪獣や怪人は必要とされているのに対して現実の世界はというと怪獣も怪人はいない。もちろんそれはいなくても構わないし、いなくったって世界は存続する。
でも、世界は本当に怪獣や怪人を必要としていないのであろうか。
とまあ、七面倒臭いことを考えなくっても怪獣はともかく怪人は本当に存在する。
この本に登場する四人は、風貌はさることながらその行動をみる限り怪人と呼びたくなる存在だ。
この本で最初に登場する康芳夫は、おそらく僕と同じ年代の人間に強烈なインパクトをあたえた人物だ。モハメド・アリ対アントニオ猪木戦を実現させたり、チンパンジーと人間の中間にあたる未知の生物であるオリバー君を来日させた人物なのである。僕が小学生のころ、こんな楽しい出来事があったのだ。どことなくうさんくさく、そして泥臭いのだが、それが楽しかったのだ。
荒木飛呂彦・鬼窪浩久による『変人偏屈列伝』でも語られていたけれども、こちらは絵による誇張が少し強すぎるせいか怪人というよりも化け物といった感じなのだが、この本では康芳夫という人物が精神的なレベルからして既に怪人だったということがわかる。
彼はその後、アントニオ猪木対アミン大統領戦なるものを企画したのだがウガンダの政変で残念ながら実現はされなかった。実現したとしてもプロレス対ボクシングなのでおそらくはモハメド・アリ対アントニオ猪木戦と同じような展開になっただろう。けれども、アントニオ猪木の相手が食人大統領アミンだぜ、よくこんなことを考えつくもんだ。そしてよくこんな事に金を出す人間がいるものだ。おまけに本当に実現させてしまおうとする人間がいる。そう考えると世界は怪人を必要としているんじゃないかと思えるのだ。
アントニオ猪木対アミン大統領は実現しなかったけれども、マイク・レズニックはアミン大統領の挑発にタンザニアの大統領ニエレレが乗ったとしたらという仮定のもとに、「四角いリングのムワリム」というニエレレ対アミン戦が行われた世界の話を書いた。
その時、レズニックも凄いなあと思ってしまった。
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