消失!

消失! (講談社ノベルス ナK- 2 綾辻・有栖川復刊セレクション)

  •  中西 智明/
  • 販売元/出版社 講談社
  • 発売日 2007-10

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1990年といえば、よほどのことがない限り文庫本しか買わなかった時代だし、仮に文庫以外の本を買っていたとしても、新本格にまでは触手が出なかっただろう。
と自己弁護しても仕方ないけれども、ようやく読むことができた。
不幸なことについつい誘惑に負けてというか、おそらく読むことなど出来ないだろうとあきらめが入っていた頃にうっかり真相の一部を知ってしまったために、終盤に明らかになる最初の真相を楽しむことが出来なかったのである。もっともこの真相を知っていたから逆に如何に旨く騙そうとしているのかという部分を楽しみながら読むことができた、というのはちょっと負け惜しみだ。
確かになるほど、世間での評価が別れる真相ではある。しかし、それ以上に驚いたのは次の真相で、こちらの方は知らなかったので素直に驚くことが出来た。というよりも、最初の真相は第二の真相のための捨てゴマに過ぎないのではないだろうか。ここにきて連続殺害事件が見事に消失してしまうのである。確かにミッシングリンク物における新機軸だった。
もっとも、ミッシングリンクを扱いながらも、事件そのものは早いうちに終わってしまい、それ以上事件は起こらない。目次の構成からしてそれ以上事件が起こらないことがわかってしまうせいもあるけれども、それ故にサスペンス性が全くなく、加えて個々の事件における真相も小粒であるあたり、ねらいが別のところにある点で仕方ないとはいえ、もう少し何とかなったら傑作になり得たと思うと非情に残念だ。

コメント

  1. toorisugari より:

    触手自重

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