- 著 小川 一水/
- 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 2007-10
小川一水版バーサーカーといった趣だが、全編をそこはかとなく流れる絶望感が読んでいて心地良い。個人的にはもう少し絶望的な方が良かったのだが、タイムトラベルとパラドックスの問題、敵異星体の目的、さらには登場人物間の恋愛問題などなとわずか270ページほどの分量の中に詰め込んだことを考えるとこの程度が丁度良いのかも知れない。
しかし、パラドックスに関する処理も、そういうものだと思ってくれと無理矢理押し切ってしまっただけで、よくよく考えるとまったくもって腑に落ちない。異星体が時間遡航したのは現時点での形成が逆転してしまい劣勢になってしまったからだと説明された次のページで、この時間軸は近いうちに滅亡してしまうと言ってしまっている。根拠は未来からの援軍が来ないからということなのだが、敵側は劣勢になったはずではないのだろうか。それで何故滅んでしまうのかわからない。
小川一水が時間物に挑戦したということで期待したのだが、がっかりだ。
というわけで、雰囲気は素晴らしいのだが、ただそれだけ。勢いだけで押し切ってしまった感があるのだが、投入されたアイデアの密度とコンパクトさは捨てがたい物がある。
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