- 著 ジョン・C・ライト/
- 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 2007-10-24
全長100キロメートルを越す宇宙船を手に入れ、外宇宙へと目指しているのかと思いきや、まだ海王星付近。しかも主人公ファエトン自身の人格をダウンロードしているところから物語は始まる。どうやら前作で仲間になったアトキンズに殺されて復活の最中らしい。同意の上で殺されたらしいのだがその理由はわからないというまたしても記憶喪失の状態である。
そして宇宙船の正統な持ち主が乗船を求めてきているのだが、彼は明らかに敵の手先なのだ。いきなり窮地に立たされる主人公ファエトン。そして次から次へと明かされる意外な真実。
宇宙船はさっぱり太陽系から外へは出ないうえに、次から次へと意外な事実が明らかになりながらもどれが真実なのかさっぱり判らない状態なので全然スッキリしない展開が続く、というかひたすら議論しまくるのだ敵も味方もこの連中どもは。
しかしそんな中でも知能指数350程度に下がってしまっただとか、強烈な加速度のせいで防護服の中でドロドロのミンチ状態になっていたのを再生しただとか、狂ったガジェットやらアイデアやらは満載。そもそも議論だけで敵をやっつけてしまおうとするんだから何かが決定的に狂っているとしか言いようがない。あまりにも素敵すぎる。
そして最終決戦の場は太陽の中である。せっかく登場した恒星間移動能力を持つ最強の宇宙船も、その能力を太陽の高温に耐えるためだけに使われるのである。
最終巻でのカタルシスに期待して前二巻を耐えに耐えて読んできた人にはがっかりな展開なのだが、ここまでやられると不思議なトリップ感というか酩酊感に酔いしれてしまい何故か満足してしまうし、読後感は非常に良い。これぞSFだという感じさえしてくるのだが、多分気のせいだろう。
しかし、なにかとんでもない話を読んだということには違いなく、世間の評価がどうであれ、この不思議な高揚感は最期まで読んだ人間だけが味わうことが出来る特権だ。もっとも、これだけの苦行をしたのだからあっさりと駄作だと認めたくはない気持ちも若干あるけど、作者も読者も何か決定的に勘違いしているんじゃないのかと思わせてしまうこの作品、十年後くらいにもう一度読み返してみたい物である。
『ゴールデン・エイジ 1 幻覚のラビリンス』
『ゴールデン・エイジ 2 フェニックスの飛翔』
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