- 著 小林 泰三/
- 販売元/出版社 角川書店
- 発売日 2007-09-25
超空想科学怪奇譚である『ΑΩ』と比べると、肩の力が抜けたエンターテイメントだった。いや、ここでいう肩の力が抜けたというのは『ΑΩ』での、如何に合理的にウルトラマンという存在を成立させることができるかという部分における執拗なまでの理屈と屁理屈の部分が抜け落ちているということであって、物語そのものの肩の力が抜けているわけではない。
今回は吸血鬼なのであるが、その存在理由に対する説明というのはあまりなくシリーズ化をねらっているかのごとき曖昧さなんだけれども、物語を読む場合必ず計算して読むという作者だけあって、所々でハードSFっぽい計算があったりするので侮れない。
しかしそんなことはともかく、作者のもう一つの特徴であるドロドロぬるぬるのスプラッター要素は手抜かりなく全開だ。しかし吸血鬼物なので血まみれなのはまあ許すけど、手足がもぎ取れ臓物が噴出するのはいかがなものか。
十字架とか聖水とか大蒜とかが効かない設定なので、吸血鬼一匹を倒すだけでも何人もの死者が出るしまつだ。初っぱなから絶望的な戦いを強いられる展開はなかなか燃えるものがある。そしてそのテンションは最初から最後まで落ちずに突っ走るのでこういう話が好きな人には最後まで安心して読むことが出来る。
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