- 著 米澤 穂信/
- 販売元/出版社 文藝春秋
- 発売日 2007-08
潔いほど、いろんなものをすっぱりと切り落としているなあ。
本来ならば書かれてしかるべき犯行動機やら目的やらと、まあ言ってみれば人間を描くという部分に該当するものが潔く落とされている。ここまで潔いとまあちょっとは気になるんだけれども、これはこれで構わないかという気にもさせられる。というか、ある意味ずるいよなこれは。
もっとも、ここまで人工的な設定にする以上はこうなるのは必然的でもあっただろうけどね。
というわけで、物語を読んでいるという気分にはさっぱりなれず、ゲームをしている感覚に近い感じでもあったのだけれども、こういう雰囲気を楽しむにはちょっと遅すぎたというか年を取りすぎたという気がしてならない。
クローズドサークルとか十戒とか出てきてもなんだか今更感が漂ってきてしまうのである。もっとも、そんなことを抜きにしても面白い話ではあったのだけれども、おそらくミステリに淫していればいるほどこの本は面白く読むことができたに違いない。
今までの作者の書いた本が、ビルドゥングスロマンとミステリを足した物だったとすれば、今回はそこからビルドゥングスロマンを引いたもので、引いた分だけさらにミステリを足し込んだといえるわけで、この本はもう一方の極北になるのだろう。
それはそうと、なんだかあちらこちらで十戒やら二十則やらの話題が上がっているけど、若いっていいなあと思ってしまう。
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