- 著 ジョン・バンヴィル/
- 販売元/出版社 早川書房
- 発売日 2007-07-24
原文がどんな感じなのかわからないんだけども、共訳という形ではあるが翻訳者に佐藤亜紀を持ってきたのは最強に近い組み合わせではないだろうか。
というのも、読んでいて違和感が無く、むしろ本当のところはジョン・バンヴィルの名を騙って佐藤亜紀が全てを創作したのではないのだろうかとほんの少し思ったくらいである。
そもそも、作品の紹介文からして異常だ。
冷酷な父、正気でない母、爆死した祖母を持つ主人公は、荒廃した屋敷にひとり残り、記憶の断片をかきあつめる。
冷酷な父はまあ別に良くある設定でこれはこれで構わないだろうし、正気でない母だって別にそれほど不自然ではない。しかし祖母は爆死するのである。どこかしら何かがおかしいとしか言わざるをえない。
一体どんな話なのだろうかと読もうとすると、これが一筋縄ではいかない。そもそも佐藤亜紀が翻訳をしているのである。ストーリーを追いかけようとする以前に、文章が立ちはだかるのだ。といっても難解な文章ではない。あまりにも凄すぎる文章の前に、ああ、ただひたすらこの文章に浸りまくりたいと言う気持ちになってしまうのである。
もはや物語がどんな内容であっても構わない。ただ、この文章をひたすらひたすら、いつまでも読み続けていたいと思ってしまうのであった。
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