時の罠

時の罠

  •  キース・ローマー/
  • 販売元/出版社 早川書房
  • 発売日 2000

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いまさらキース・ローマーという気もしないでもないが、『銀河のさすらいびと』は復刊したし、気楽に読めて単純明快で、そして楽しくって面白くって、なによりも薄いというのは捨てがたい魅力がある。
で、実際に読んでみると『銀河のさすらいびと』と同様、そんなに必死で読もうと努力するほどの物でもなかったんだけれども、まあ、はったりは効いている。
なにしろ、異次元からの侵略者によって、世界は104億494万1602の閉鎖空間に分断され、24時間単位でリセットされる時の罠に閉じこめられてしまうという設定そのものはワクワクする設定である。しかも主人公と行動を共にする美少女の名前がク・ネルである。全くどうしてこんな名前を使うんだキース・ローマー、と問いつめたくもなるんだが、まあそんなことはどうでも良い。
この少女、物語が始まって数ページ目にいきなり登場していきなり死んでしまうのである。主人公が何物なのかもまだよく判らないうちにというもの凄い高速展開。しかし、その後100ページ近く主人公は、時の罠の裂け目をくぐり抜けてただ単に分断された閉鎖空間を渡り歩くだけなどという苦行僧のごとき展開をしていくのである。230ページしかない中で事件解決に何も奉仕しないエピソードが延々と続いて、この先どうなるのかと別な意味でハラハラドキドキするのだが、元々のネタが、それほどの長編向きのネタではないので読み終えてみれば安心。後半は意表をつくご都合主義連発でもって無事解決へと結びつくのである。
それにしても、<多元宇宙>シリーズといい、<混線次元>シリーズといい、<レティーフ>シリーズはちょっとたくさんあるので仕方ない気もするが、どのシリーズも翻訳が途中で止まってしまっているのはもったいない気がする。
調べてみたらこの本だって、『Back to the Time Trap』って続編があるじゃないですか。

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