- 著 松村 栄子/
- 販売元/出版社 角川春樹事務所
- 発売日 2001-02
『紫の砂漠』の続編。
一見するとファンタジーとしか見えない物語世界の根底に驚くほど骨太なSF設定が潜んでいた前作、隠されていた世界の秘密は衝撃的で、主人公の行動の結果は残酷で、そしてなによりも美しかった物語にこれ以上追加する物など無いようにも思えるのだが、まだまだ語られる物語は存在するのであった。
前作で既に世界の秘密に関しては語られてしまっているので、あれ以上の驚くべき秘密という物は存在しないのだが、主人公の人生は終わってしまったわけではなく、生きている以上は主人公の苦しみも悲しみも続くのである。
そして主人公によって明らかになってしまった世界の秘密によって、「聞く神」「告げる神」「見守る神」のバランスが崩れ、争いが起きる。細かな部分を見ていけば、疑問に思う部分も多いし、せっかくの<守る性><生む性>や<真実の恋>という設定もどこかしら置き去りにされてしまっているし、主人公は相変わらず内相的で、なおかつ我が儘だったりもするのだけれど、苦しみの果てにたどり着いた結末は不思議なことに美しく、そして胸を打つのである。
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