『移動都市』の続きは出ないのかなあと思っていたら、同じ作者の別シリーズが理論社から出たとは知らなかったよ。やるなあ理論社。
しかし、
1851年イギリス、初の万博の準備が進む頃…月のはずれに浮かぶ<ラークライト>で暮らす一家に大変な事態が!
- 著 牧野 修/
- 販売元/出版社 理論社
- 発売日 2007-08
『水銀奇譚』というタイトルからして稲生平太郎の『アクアリウムの夜』を想像してしまう。
だからというわけではないが、多分あのような物語なのだと勝手に思いこんでしまうのである。
で、読み始めると、やはり違う。まあそれは当たり前のことだけれども、しかし、読んでいてどこか同じ感覚を覚える。同時に天沢退二郎の『光車よ、回れ!』とも同じものを感じる。やはり「水」が重要な役割を持っているせいなのだろう。
勝手な思惑とは違う物だったけれども、この物語もやはり同じ系統に属する物語なのだと思う。作中ではひたすら雨が降り続き、読んでいてもじめじめとした雰囲気がそこここに居座り続けて読んでいいるのだ。ああうれしくなるようなこの陰鬱感。ボクの望んでいた恐怖はここにあるんだと感じる。
事の真相は意外と明確で、もっと得体の知れない恐怖のほうが良かったと思うんだけれど、ハッピーエンドでありながらもラストの何ともいえない喪失感は素晴らしい。
これで町内の地図があれば完璧だっただろうけど、物語としても地図の必要はそれほど無いので仕方ないところだ。
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