三人目の幽霊

三人目の幽霊

  •  大倉 崇裕/
  • 販売元/出版社 東京創元社
  • 発売日 2007-06

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落語は話芸なのでそれを活字で表現しようとするのはいささか分が悪いのですが、それでも作者自身が落語家だったりすると『ファイティング寿限無』のような面白い話が出来てしまうし、書き手が落語家でなくっても『しゃべれどもしゃべれども』のような元気の出てくる話が出来てしまうわけです。一方で『滝田ゆう落語劇場』のような、落語の話そのものを漫画にしてしまうものもあったりして、こうなるともう滝田ゆうによる漫画という形式での話芸といってもいいかも知れません。
ミステリに目を向けると、落語とミステリというのは相性がいいのか、北村薫の<円紫さんと私>シリーズや田中啓文の<笑酔亭梅寿謎解噺>シリーズがあります。この二作は落語家が登場するわけですが、都筑道夫の『きまぐれ砂絵』になると落語家は登場せず、落語の話そのものがモチーフとして使われたりもします。
で、大倉崇裕の『三人目の幽霊』となると落語家が登場し、落語の世界の話も出てくる上に、落語の話がモチーフとして使われるのだけれども、まったく落語と関係のない話があったりと、意外とまとまりがなかったりします。まあ良くいえばバラエティにとんでいるともいえるのですが。
しかし、読んでいて驚いたのが想像していた以上に「推理」の部分が欠如していたことで、思わず柳広司の『百万のマルコ』を思い出してしまいました。まああそこまで凄くはないのですが、もう少し「推理」の過程があってもいいんじゃないのかなあと、続編に期待するところです。

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