- 著 長嶋 有/
- 販売元/出版社 文藝春秋
- 発売日 2007-06
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今回の主人公もやはり平和な家庭生活を営めるわけでもなく、今までのお釣りでかろうじて生活しているようなバツイチの男。
ゲームデザイナーだったけれども仕事を辞めたとたんに奥さんが浮気をし始め、離婚。しかし別れた奥さんからは定期的にメールが届くし寄りを戻すつもりはないようだけれども、行き来があったりする。前作『ジャージの二人』でもどろどろとした人間関係というものが希薄だったけれども、今回はそれ以上に希薄。
それ故になのか読んでいて非常に身に包まされるのである。
別に無職でも仕事を辞めよう、まあ休みを取りたいとは思うけど、そんな風に思っているわけでも無く、家庭崩壊の危機まっただ中でも、そんな予兆が見え隠れしているわけでもなく、奥さんが浮気をしているわけでも、まあ多分だけど、そんなこともなく、主人公と類似する点はほとんど見あたらないのだけれども、読んでいるとなぜだか身に包まされてしまうのである。
そんな都合の良いことなど起こるはずが無い、などと思いつつも、そこに描かれているのはひょっとしたら自分の身の回りでも起こりうるかも知れない些細な出来事の積み重ねで、自分の日常生活など強靱な岩盤の上に築かれているわけではなく、ちょっとした出来事で崩れてしまう脆いものだからなのだろう。
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