データはウソをつく―科学的な社会調査の方法

データはウソをつく―科学的な社会調査の方法

  •  谷岡 一郎/
  • 販売元/出版社 筑摩書房
  • 発売日 2007-05

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なにやら「神の目」というものが流行っているらしい。
単なるチェーンメールなので困った物なのだが、内容がこれまた素敵すぎて吹き出してしまった。
NASAが撮影した3000年に一度の非常に珍しい現象で、これを見つめると奇蹟が起きるという内容。
が……、この写真をNASAが公開したのは2003年5月10日のことで今から4年以上も昔のことだ。しかもこのらせん星雲、地球から650光年くらい離れているので、この写真も今から650年も昔の姿なのである。誰が奇蹟を起こしてくれているのかわからないけれども、650年も昔に起こった出来事のために今でも奇蹟を起こし続けてくれているなんて、すげえ奇蹟の大盤振る舞いだよ。
しかし不思議なのは、2003年に撮った写真だと明記しながらも、今年が最大パワーで奇蹟を発揮してくれるなんて書かれていることだ。
最近のニュースではこのらせん星雲、多くの乱暴な彗星が衝突して、死んだ星の周りでほこりをけり上げているということだ。充血して真っ赤になってるよ。今が最大パワーを発揮してくれるのであれば、こっちの写真でなければ駄目だろうけど、どうみても奇蹟を起こしてくれそうな写真じゃないな。逆に呪われそうだ。
しかし、ここまであからさまにわかるウソを付くのもたいしたものだと思ったよ。
『「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ』の姉妹編にあたる。
世間にあふれているさまざまな統計データがいかに恣意的にねじ曲げられているのか、という事について書かれた本が前著で、どのようにすれば正しい統計データを集めることが出来るのかについて書かれたのが今回の本。
前著に比べると、だいぶ過激な言動が増え、よっぽど腹に据えかねているのだろうなあと思うのだが、世の中を見回してみると、確かに酷いありさまで著者同様文句の一つも言いたくもなってくる。観測出来る現象と矛盾する出来事をどうして受け入れることが出来るのだろうかと思うのだけど、何の疑問も抱かずにそのまま鵜呑みにしてしまう人が多すぎるのだよなあ。まあそれさえも個人の自由なんだけど。
内容の方はといえば前回と同様、難しい書かれ方になっているわけではなく、もの凄くわかりやすい。しかもいしいひさいちの漫画が挿絵のごとく引用され、この漫画を読むだけでも楽しいうえに、書かれている内容と見事にマッチした内容の漫画が引用されているので、漫画の方だけ読んでも理解出来た気分になる。
あまりにも内容とマッチしすぎているので、いしいひさいちがこの本のために書き下ろしをしたのではないかと疑ってしまいたくもなるけれども、書き下ろし漫画ではなく、過去の作品の中から取捨選択されたものである。
問題は、この本を良いと思う人にとってはあまり必要となる本ではなくって、もちろん読んで損するというわけではないけれど、この本を良いとは思わない人にとってこそ必要となる本であるということだ。
この本を読んで勉強し直して欲しいと思いたくなるような人はこの本を手にとる事なんてないのだろうなあ。

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