『樹木葬 ―死者の代弁者―』江波光則

  • 樹木葬 -死者の代弁者-
  • 著: 江波 光則
  • 販売元/出版社: 小学館
  • 発売日: 2014/2/18

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まさか三部作になるとは思ってもみなかったんだけれど、そもそもインパクトの大きさでいえば、一作目の『鳥葬』が一番インパクトが大きく、タイトルにある「鳥葬」の意味もしっくりくる話だったのに対して、その続きである『密葬』はタイトルの意味にそった内容であるけれども、『鳥葬』ほどのインパクトには欠けるものがあって、そりゃあまあ、一作目のラストであんな形で終わらせたものに対してさらにそれじゃあまだダメだとさらなる試練を与える話なんだから仕方がないといえば仕方がない。
で、三作目だ。
今回は前作から数年の月日が経ち、主人公は二十三歳という社会人となっている。それなりに成長し、働きながら夜間の大学に通い、そしていくつかの資格も取得しているという点では立派に更生したとも言えるのだが、今度はある意味、過去の自分を他者の視点で捉え直す、もしくは同じ境遇にある人間を立ち直らせるという立場に立つこととなる。もちろん一筋縄ではいかないし、更生したといっても生きていく目的を探し始めたという状態で主人公自身はいうなればようやくスタートラインを歩き始めたという状態にすぎない。先の二作をなぞらえるように、そして過去の自分自身と向き合うかのような展開は正当な続編でもある。
しかし、そういった部分よりも、立ち直った主人公が再び、似たような境遇の人間と関わりあう羽目になり、事件に巻き込まれ、ボロボロになりながらも自分自身の信念のもとに行動するという構造はハードボイルドミステリといってもよく、こういう話に結びつくのであればこれで終わりにしてしまうのではなく、主人公が様々な問題を抱えている少年少女達と係る羽目になって巻き込まれた事件を解決するハードボイルドミステリとしてシリーズ化してくれても悪くないなあと思うのだ。

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