膚の下

膚の下 (上)

  •  神林 長平/
  • 販売元/出版社 早川書房
  • 発売日 2007-03

Amazon/Bk1/楽天ブックス
膚の下(下)

  •  神林 長平/
  • 販売元/出版社 早川書房
  • 発売日 2007-03

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『あなたの魂に安らぎあれ』を読んだのは遙か昔のこと、もう既に細かな内容はすっかり忘れてしまっていたわけで、そのせいか『スター・ウォーズ エピソードIII』を見終わったときのような、これで話が繋がった感はそれほど感じなかった。しかしそれでも作中で「あなたの魂に安らぎがありますように」という言葉が何気なく登場したときには感動してしまったよ。
話を『あなたの魂に安らぎあれ』につなげなくてはならない仕組み上、予定調和的な部分が出てしまったなあと思ってしまうのはある意味、贅沢な不満であるわけで、まあとにかくこの話が<火星三部作>でなくても良かったんじゃないのかと思うくらい面白かった。
和製ディックと呼ばれるような場所から始まり神林長平は、20年かけてこんな場所まで到達してしまったのかと思うと感慨深いものがある。
いやもうこれは傑作だ。
というよりも別格といった方がいいかも知れない。これ以上に面白い本はあるし、これ以上に傑作だと思う本もある。けれどもこの『膚の下』は別格扱いをしたいのだ。
文庫にして上下巻約1000ページもありながら派手なシーンはほとんど無く、延々と主人公の成長の物語につきてしまうのだけれども、人造人間である主人公の意識が成長していく過程が感動的に素敵だ。もちろん主人公以外の人造人間の成長っぷりも素晴らしく、最初は没個性的だった人造人間たちが徐々に個性を持っていく過程の描写も丁寧で、特に終盤の彼らの行動は泣かせる。
主人公の物語は雨のシーンから始まり、雨のシーンで終わる。最初の雨は主人公に冷たいのだが、最後のシーンで降る雨は、主人公に優しく降りかかる。
その後にエピローグが始まるのだが、一気に250年以上の時間が経過する。この一気に経過するときの流れが、何ともいえない。そして神林長平といえば猫なのだけれども、犬を描いてもうまいというかこの使い方は卑怯だ。わずか数頁のエピローグの中で、250年の時の重みと犬の想い出とで不覚にも涙が出てしまった。

コメント

  1. ユキノ より:

    ちょうど読み終わりました。
    神林って「敵は海賊」みたいなコミカルな本を書くかと思えば
    この本のようにシリアス?長編がみじかく感じるような
    作品を書くんですね~。
    読んだ後で心にしみるタイトルも良かったです。

  2. Takeman より:

    分量的には長い話でしたが、それほど長さは感じさせなかったですね。
    なんにせよ、今まで神林ファンでよかったと思う作品でした。

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