- 著 柳 広司/
- 販売元/出版社 東京創元社
- 発売日 2007-01-30
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今度の探偵役はソクラテス。よくもまあ次々といろいろな人物を探偵役に仕立て上げるものだと思うのだけれども、それ以上に凄いのは起こる事件がそれに見合う内容であることで、もはやただただ感心するばかり。
しかし、それ故にだろうか、柳広司の書くミステリをごく普通のミステリとして期待するとがっかりしてしまう部分もでてきてしまう。
起こる事件は不可能犯罪が多く、今回は手足を引き裂かれたかのようなバラバラ死体が登場し、普通の人間の力ではとうてい不可能だと登場人物の一人は言う。さぞかしもの凄いトリックがあるのかと思えばそうではなく、事件の真相は究めて、というよりも拍子抜けするくらいに単純且つ矮小化されてしまう。
ではつまらないのかと言えばその逆で、事件の真相が語られた後の部分がもの凄く面白いのだ。まったくもって柳広司という人は、本当はミステリなんて書きたくないんじゃないのかと思うくらいである。しかし、ミステリのフォーマットがあるから寄りいっそう面白くなっているのもまた事実なんだけど。
この読後感っていうのは強いて言えば京極夏彦のミステリと同じ系統のもので、それを考えると京極夏彦の読者がもっと柳広司の本を読んでくれればいいのにとも思うのだけれども、そう単純には行かないのはやはり歴史上の人物を探偵役としている部分なんだろうなあ。
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