全17編の比較的短い物語の短篇集なので、描かれている物語で経過する時間もタイトルにある通り、一杯の珈琲を飲む時間程度の時間の間に起こった出来事という感じの物語が多い。
だから、読む方もそんな感じで一杯の珈琲でも飲みながら気軽に読むのが一番なのかもしれないけれども、最初のページを見た途端、そんな気軽に読むという気分など吹き飛んでしまった。
というのも、細い線で丁寧に描かれた人物や背景は構図も含めてどことなく大友克洋を彷彿させる絵であり、あるいは谷口ジローっぽい雰囲気もあるけれども、描かれている物語ひとつとってみても、初期の日常の一場面を描いていた頃の大友克洋っぽさというか大友克洋が描いていても不思議ではない内容だ。とくに、「ロボット刑事」のバカバカしさなんてのは懐かしさも伴って読んでいて楽しくなる。
初期の大友克洋の漫画が四畳半の世界で泥臭さがあったけれども、豊田徹也はそれを現代に合わせて洗練させて描いている。ページ数が少ないせいもあってか、明確な起承転結の無い話も多く、だからなんなんだと言いたくなる話もあるんだけれども、それはそれ、野暮なことなど言わずに作者が切り取った日常の一コマを楽しむのがこの本の味わい方なのだ。
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