ジャスミン

なんて変な話なんだと思った「枯葉の中の青い炎」で辻原登という作家を初めて知ったのだけれども、いざその次の話を読もうと思うと手が止まってしまった。
「発熱」はなんだか経済小説っぽい話のようだし、「花はさくら木」は時代もののようで、単純に「枯葉の中の青い炎」のような話を書く作家ではないようだ。
ということで、「枯葉の中の青い炎」のような話を求めていた身としてはちょっと躊躇してしまうのであった。
で、この「ジャスミン」は冒険浪漫らしい。

父の失踪の謎を求めて降り立った上海で、運命の女と出会う。女は中国政府に追われる身。「女と良心の呵責を両腕に抱いて生きる」とうそぶいた父をなぞるかのように、危険な恋の扉が開かれる。逃避行の挙句の別れと再会。大胆にして甘美、華麗なロマンスは国を越え、政治に逆らって、もっとも美しいラストへと突き進む。

それじゃ、わたしも「もっとも美しいラスト」を堪能させてもらおうじゃないかと意気込んで読んでみることにしたのだ。
で、思う存分堪能したのである。
まあ、冒険小説というわりにはそれほど危険な目には遭わないし、いやちょっと話が出来すぎなんじゃないかって思う部分もある。
しかし、

わたし、朝からずっと何していたか分かりますか。
「恋をしていたの」
だれと？
「あなたと」

不意打ちというやつですが、このセリフに打ちのめされましたよ。
いったいなんなんだ辻原登という作家は。