木地 雅映子〔著〕
つまるところ私は八本脚の蝶にとらえられたままなのである。
おそらくはこの先ずっと、この呪縛から逃れられないのだろう。いや呪縛という言い方は少し間違っているのかも知れない。
困惑しながらも、私の中の奥底ではそれを拒んでいるわけではないのだから。
そして何より、八本脚の蝶にとらえられたままでなければ「氷の海のガレオン」を読む気にはならなかっただろう。
そして何より、この物語は私が子供の頃、切実に必要としていた物語でもあった。
しかし、私が切実に必要としていた頃、この物語はまだこの世に生まれてはいなかった。
言葉を持たない子供にとって、世界はとても恐ろしく、残酷である。
そして私は、世界が恐ろしく、残酷であることを拒むのではなく、受け入れた。残酷でない世界がどこかにあるなどという考えを諦めたのだ。
今になって考えなおしてみると、この物語は私にとって必要だった物語でありながら、同時に必要ではない物語でもあった。
しかし私が必要でなかったとしても、この物語を必要としている子供たちはいる。
そして何より、この物語がこの物語を必要としている人々の元へと届きますように、と思うのである。
おそらくはこの先ずっと、この呪縛から逃れられないのだろう。いや呪縛という言い方は少し間違っているのかも知れない。
困惑しながらも、私の中の奥底ではそれを拒んでいるわけではないのだから。
そして何より、八本脚の蝶にとらえられたままでなければ「氷の海のガレオン」を読む気にはならなかっただろう。
そして何より、この物語は私が子供の頃、切実に必要としていた物語でもあった。
しかし、私が切実に必要としていた頃、この物語はまだこの世に生まれてはいなかった。
言葉を持たない子供にとって、世界はとても恐ろしく、残酷である。
そして私は、世界が恐ろしく、残酷であることを拒むのではなく、受け入れた。残酷でない世界がどこかにあるなどという考えを諦めたのだ。
今になって考えなおしてみると、この物語は私にとって必要だった物語でありながら、同時に必要ではない物語でもあった。
しかし私が必要でなかったとしても、この物語を必要としている子供たちはいる。
そして何より、この物語がこの物語を必要としている人々の元へと届きますように、と思うのである。
コメント
ご存じかもしれませんが、単行本版には文庫版にはない2篇が収録されています。こちらもすばらしい出来ですよ。
この記事にコメントがつくとは思ってもいませんでしたので驚いていますが、情報ありがとうございます。
今回は収録されなかった話があるのは知っていたのですが、いかんせん単行本版は絶版で入手困難なんですよねえ。
未収録作品も文庫として出ないものかと淡い期待をいだいているのですが……。