北国 浩二著
日本SF新人賞でデビューした北國浩二の第二作。
デビュー作は読んでいないのだけれども、SF小説でデビューして二作目がミステリのレーベルから出たことに驚いたわけですが、読み終えてなんとなく納得。
本格ミステリだけでなく広義のミステリも含むミステリ・フロンティアというレーベルが存在したこと、そしてそのレーベルから出たということはこの作品にとって幸運なことだっただろう。
謎解きという要素はなく、全体で三百ページ強のボリュームのうち二百五十ページほどが、何故殺人を犯さなければいけなかったのかに費やされる。もちろん最初のうちは殺意さえ存在しない。
いわば、アガサ・クリスティの「ゼロ時間へ」でもあるんだけれども、殺意の芽生えから犯行に至るまでの過程に全体の六分の五を費やしながらもそのあたりが成功しているかといえば実に微妙なところ。かといってつまらないのかといえばそうでもなく、ミステリに切り替わる瞬間を今か今かと期待しながら読み進めていくと、この危うさ加減がけっこう面白い。
そして残り六分の一。愚かな人間の愚かな行為、無論それは単純に愚かとは言い切れないのだけれども、善意に満ちあふれた世界の中でのたった一つの過ちに対する悲しい結末は何ともいえない余韻を残して幕を閉じる。
デビュー作は読んでいないのだけれども、SF小説でデビューして二作目がミステリのレーベルから出たことに驚いたわけですが、読み終えてなんとなく納得。
本格ミステリだけでなく広義のミステリも含むミステリ・フロンティアというレーベルが存在したこと、そしてそのレーベルから出たということはこの作品にとって幸運なことだっただろう。
謎解きという要素はなく、全体で三百ページ強のボリュームのうち二百五十ページほどが、何故殺人を犯さなければいけなかったのかに費やされる。もちろん最初のうちは殺意さえ存在しない。
いわば、アガサ・クリスティの「ゼロ時間へ」でもあるんだけれども、殺意の芽生えから犯行に至るまでの過程に全体の六分の五を費やしながらもそのあたりが成功しているかといえば実に微妙なところ。かといってつまらないのかといえばそうでもなく、ミステリに切り替わる瞬間を今か今かと期待しながら読み進めていくと、この危うさ加減がけっこう面白い。
そして残り六分の一。愚かな人間の愚かな行為、無論それは単純に愚かとは言い切れないのだけれども、善意に満ちあふれた世界の中でのたった一つの過ちに対する悲しい結末は何ともいえない余韻を残して幕を閉じる。
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