ジョン・ブラナー原作 / 村田 靖子訳
アメリカで出版されたSF小説に対して与えられるヒューゴー賞という賞があるのですが、受賞した長編はほとんど大抵翻訳されます。このほとんどというのが実にくせ者で、近年の受賞作がまだ翻訳されないのは翻訳のタイムラグということで説明出来たりするのですが、1969年の受賞作「Stand on Zanzibar」だけが何故か未訳のまま現在に至っているのです。
この「Stand on Zanzibar」を書いた作家がジョン・ブラナー。意外と翻訳がされているわりには肝心の作品が未訳のままという実に不幸な作家でもあります。
翻訳されている作品も今では片っ端から絶版状態。作者もすでに鬼籍に入っているので、おそらく再評価させられることなど無いんだろうなあ。国書刊行会で拾ってくれればいいのだけども。
というわけで、唯一新刊で入手可能な「原始惑星への脱出」を読んでみることにしました。例によって読書意欲を減退させるけばけばしい表紙の久保書店のSFノベルズです。
しかしこの表紙絵、裏表紙にある原著の表紙に比べると個々のパーツをみれば意外と内容に忠実で、これだけ忠実でありながら全部が組み合わさるとこんなイメージになってしまうのが不思議なくらい。表紙と題名でずいぶんと損をしております。
地球を遙か遠く離れた植民惑星「ツァラ」の主星が超新星と化す。かろうじて脱出した人々は宇宙船の酸素がなくなろうとするぎりぎりのところでかろうじて生存可能な惑星に不時着する。そして最初の冬を越し、夏がやって来たところから物語の幕が開ける。
というわけで、この物語は脱出パニックでもなく、過酷な生存サバイバルでもなく、生き残った人々の間で起こる様々な確執の話になるのです。
脱出前は大陸指導官だった夫妻。大陸指導官としては有能だったのかも知れないが、なんの道具もないこの惑星では無能に等しく、それでいながらリーダーシップをとろうとする。宇宙船の船長はリーダー的な立場をとらなければいけないにも関わらず、宇宙船が水没して修理不能な状態に心痛め、身をやつしてしまっている。その他、自由奔放に男と寝てばかりいる女。さらにはその女に嫉妬する女。構ってもらいたいために自殺未遂する娘、などなど。
お前らせっかく助かったのにわがまますぎるぞと言いたくなる。
一方で、この惑星に不時着したもう一つの宇宙船グループの方では宇宙船の船長が独裁制を敷き、難民達を奴隷のごとくこき使い宇宙船の修理をしようとしている。
そんなわがまま集団の中で一人がんばろうとする主人公。
表紙のイメージからはかけ離れた地味ながらも地に足のついたしっかりとした内容。それでいてあまり重苦しくならないところはジョン・ブラナーらしいところかもしれません。
この「Stand on Zanzibar」を書いた作家がジョン・ブラナー。意外と翻訳がされているわりには肝心の作品が未訳のままという実に不幸な作家でもあります。
翻訳されている作品も今では片っ端から絶版状態。作者もすでに鬼籍に入っているので、おそらく再評価させられることなど無いんだろうなあ。国書刊行会で拾ってくれればいいのだけども。
というわけで、唯一新刊で入手可能な「原始惑星への脱出」を読んでみることにしました。例によって読書意欲を減退させるけばけばしい表紙の久保書店のSFノベルズです。
しかしこの表紙絵、裏表紙にある原著の表紙に比べると個々のパーツをみれば意外と内容に忠実で、これだけ忠実でありながら全部が組み合わさるとこんなイメージになってしまうのが不思議なくらい。表紙と題名でずいぶんと損をしております。
地球を遙か遠く離れた植民惑星「ツァラ」の主星が超新星と化す。かろうじて脱出した人々は宇宙船の酸素がなくなろうとするぎりぎりのところでかろうじて生存可能な惑星に不時着する。そして最初の冬を越し、夏がやって来たところから物語の幕が開ける。
というわけで、この物語は脱出パニックでもなく、過酷な生存サバイバルでもなく、生き残った人々の間で起こる様々な確執の話になるのです。
脱出前は大陸指導官だった夫妻。大陸指導官としては有能だったのかも知れないが、なんの道具もないこの惑星では無能に等しく、それでいながらリーダーシップをとろうとする。宇宙船の船長はリーダー的な立場をとらなければいけないにも関わらず、宇宙船が水没して修理不能な状態に心痛め、身をやつしてしまっている。その他、自由奔放に男と寝てばかりいる女。さらにはその女に嫉妬する女。構ってもらいたいために自殺未遂する娘、などなど。
お前らせっかく助かったのにわがまますぎるぞと言いたくなる。
一方で、この惑星に不時着したもう一つの宇宙船グループの方では宇宙船の船長が独裁制を敷き、難民達を奴隷のごとくこき使い宇宙船の修理をしようとしている。
そんなわがまま集団の中で一人がんばろうとする主人公。
表紙のイメージからはかけ離れた地味ながらも地に足のついたしっかりとした内容。それでいてあまり重苦しくならないところはジョン・ブラナーらしいところかもしれません。
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